創発生体工学材料研究チーム

主宰者

主宰者名 伊藤 嘉浩 Yoshihiro Ito
学位 工学博士
役職 チームリーダー
略歴
1987 京都大学大学院工学研究科 博士学位取得
1988 京都大学工学部 助手
1996 同 助教授
1997 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科 助教授
1999 徳島大学工学部 教授
2002 神奈川科学技術アカデミー プロジェクトリーダー
2004 理化学研究所 伊藤ナノ医工学研究室 主任研究員 (現職)
2013 同 創発物性科学研究センター 超分子機能化学部門 創発生体工学材料研究チーム チームリーダー (現職)

研究室概要

人工素子・材料と、生体成分からなる素子とを様々に複合化して環境調和型超高能率エネルギー収集・変換のための創発材料の研究を行う。有機合成化学、高分子化学、バイオテクノロジーなどの融合技術で新しい精密高分子合成技術を生み出し、それにより新しい生体素子と人工素子を生み出し、それらの界面の研究を介して超高能率エネルギー変換デバイスや生体機能化デバイスを実現することを目指す。特に、機能性モノマーを含むランダム配列の高分子ライブラリーから、特定の機能をもつ新しい高分子を選別し、生み出す化学拡張進化分子工学の手法を「創発化学」として確立し、その応用展開を目指す。

研究分野

生体工学、有機化学、材料科学

キーワード

エネルギー変換
センサー
精密高分子合成
進化分子工学
ナノバイオテクノロジー

研究紹介

光反応性高分子を用いたマイクロアレイ・チップを用いた多項目免疫検査システム

当チームでは、新しい光反応性高分子を用いたマイクロアレイ・チップでアレルギー診断用システムを開発し、医療保険収載された。今回そのシステムを用いて、新たにSARS-CoV-2変異株に特異的な抗体を自動で迅速に定量分析できるシステムを、フェニルアジド基とポリオキシエチレンからなる光反応性高分子を用いたマイクロアレイを利用して開発した。光反応性高分子をプラスチック板の上に被覆し、その上にウイルス変異株のタンパク質水溶液をマイクロスポットし、光照射して固定化した。ピペッティング、試薬撹拌、洗浄を自動的に行える装置を使い、血清や全血に含まれるウイルス特異的抗体を測定できるようにした。指先から採血した5μℓを用いて8分で多項目の抗体を一度に測定できた。得られた結果は、従来の酵素免疫測定法や免疫クロマトグラフ法の測定結果と高い相関関係が得られた。本システムは、迅速で定量的な自動分析に用いることができ、臨床応用のための様々な感染症履歴や免疫状態の診断に役立つと期待できる。

指先から採取した血液から、短時間に新型コロナウイルス抗体変異株ごとの抗体量を自動定量できるシステム

 

生体機能に触発された水中接着性高分子による生物活性材料

現代医療では、金属、セラミクスから高分子まで、さまざまな材料が、体内で人工臓器としてあるいは医療機器の一部として、体内外で生体成分と接触して用いられている。これら医療用材料として選ばれる素材は生体適合性を考慮して選ばれているが、必ずしも生体との接着性や生着性は十分ではなく、材料表面の処理によってこれらの性質を高める手法が研究されている。本チームでは、生体材料の生体親和性を向上させる手法として、生理活性を持つタンパク質(ポリペプチド)を材料表面に固定する手法を開発している。例えば、ムラサキイガイなどの貝類が岩場に接着する際に分泌する接着性タンパク質の活性部位に含まれる3, 4-ジヒドロキシフェニルアラニンを、成長因子タンパク質配列に、遺伝子組換え技術と酵素法、固相合成法などを複合したバイオ直交化学アプローチで導入した。すると、チタンやヒドロキシアパタイトのような無機材料表面にも高分子の有機材料表面にも固定化できるようになり、生体との親和性が向上した。細胞表面の受容体を直接、長期間に亘り活性化できるため、溶解状態のタンパク質より高い活性があることもわかってきた。

図

生理活性タンパク質への水中接着タンパク質の活性部位をバイオ直交化学導入し生理活性材料表面創成

 

溶液プロセスによる基板フリー熱電変換フィルム

単層カーボンナノチューブ (SWCNTs) は、高い電気伝導度、優れた機械的強度、軽量であるため、エネルギー変換材料として有望である。しかし、SWCNTs は加工性に乏しく、ただちに凝集する。我々は溶液プロセスによる、基板フリー熱電変換フィルムの作製に成功した。側鎖にカーボネート部位、可溶部位を有する、熱脱離性ポリチオフェン誘導体を合成した。このポリマーを使い SWCNTs を非共有結合的に修飾することで、ポリマー/SWCNTs分散液を得た。得られた分散液は塗布が可能であり、溶液プロセスでポリマー/SWCNTs複合フィルムを作製することができた。また、可溶部位の固相熱脱離反応によって、複合フィルムが溶媒に対して不溶になることを明らかにした。これらの機能を用い,溶媒蒸発法によって作製した、基板フリーポリマー/SWCNTs 複合フィルムは、熱電変換性を示した。本成果は、フレキシブル熱電変換素子の開発に有用である。

図

熱脱離性ポリチオフェンを用いた SWCNTs 分散液と不溶性 SWCNTs フィルムの作製

メンバー一覧

伊藤 嘉浩 Yoshihiro Ito

チームリーダー y-ito[at]riken.jp

川本 益揮 Masuki Kawamoto

専任研究員

鵜澤 尊規 Takanori Uzawa

専任研究員

上田 一樹 Motoki Ueda

専任研究員

Mohammed Abdelhamid ramadan Abosheasha

特別研究員

阿部 洋 Hiroshi Abe

客員主管研究員

萩原 恭二 Kyoji Hagiwara

客員研究員

秋元 淳 Jun Akimoto

客員研究員

Osama Ramadan Mohamed Mohamed Metawea

国際プログラム・アソシエイト

MingXin Hu

大学院生リサーチ・アソシエイト

皆川 倫子 Noriko Minagawa

テクニカルスタッフI

髙久 英明 Hideaki Takaku

テクニカルスタッフI

Kon Son

研修生

主要論文

  1. M. M. Rahman, M. A. Abosheasha, Y. Ito, and M. Ueda

    DNA-induced fusion between lipid domains of peptide-lipid hybrid vesicles

    Chem. Commun. 58, 11799-11802 (2022)
  2. J. Akimoto, H. Kashiwagi, N. Morishima, S. Obuse, T. Isoshima, T. Kageyama, H. Nakajima, and Y. Ito

    Rapid and quantitative detection of multiple antibodies against SARS-CoV-2 mutant proteins by photo-immobilized microarray

    Anal. Sci. 38, 1313–1321 (2022)
  3. M. H. Othman, Y. Ito, and J. Akimoto

    Mild-Temperature-Induced Recombination of Crosslinking Structures in Hydrogels Using Phenylboronic-Acid-Functionalized 3D Nanoparticle Crosslinkers

    ACS Appl. Polym. Mater. 4, 5047–5055 (2022)
  4. H. Kashiwagi, N. Morishima, S. Obuse, T. Isoshima, J. Akimoto, and Y. Ito

    SARS-CoV-2 Proteins Microarray by Photoimmobilization for Serodiagnosis of the Antibodies

    Bull. Chem. Soc. Jpn. 94, 2435-2443 (2021)
  5. S. Tada, X. L. Ren, H. L. Mao, Y. Heo, S. H. Park, T. Isoshima, L. P. Zhu, X. Y. Zhou, R. Ito, S. Kurata, M. Osaki, E. Kobatake, and Y. Ito

    Versatile Mitogenic and Differentiation-Inducible Layer Formation by Underwater Adhesive Polypeptides

    Adv. Sci. 8, 2100961 (2021)

研究紹介記事