有機半導体の結晶構造制御による高移動度化
有機半導体の特性は分子レベルでの電子構造だけでなく、分子集合体中での配列や配向に大きく影響を受ける。しかし、分子設計の段階で結晶構造を予測し制御することは非常に困難であり、有機半導体の結晶構造制御のための方法論や手法の開発は重要な課題である。我々は、メチルチオ基などの単純な置換基を有機半導体骨格の適切な位置に導入し分子間相互作用を制御することで、高移動化に適した結晶構造に導くことが可能であることを見出している。例えば、sandwich herringbone型に結晶化するピレンに4個のメチルチオ基を位置選択的に導入すると、brickwork(レンガ塀)型構造へと劇的に結晶構造が変化し、二次元的な伝導経路を形成できることを見出した。単結晶トランジスタにより電荷移動度を評価したところ、30 cm2 V-1 s-1を超える移動度を示し、有機半導体としては最高レベルの電荷輸送能を持つことが明らかとなった。
有機半導体の結晶構造制御による高移動度化
チエノアセン系有機半導体の結晶構造制御
有機半導体の特性は分子レベルでの電子構造だけでなく、分子集合体中での配列や配向に大きく影響を受ける。しかし、一般に分子設計の段階で結晶構造を予測したり制御することは非常に困難であり、有機半導体の結晶構造制御のための方法論や手法の開発は重要な課題である。最も高い移動度を与える有機半導体としてルブレンが知られているが、その結晶構造は特異なpitched-πstack構造と呼ばれるものであり、これまでは同様の結晶構造をルブレン以外の分子で実現することは困難であった。チエノアセン系分子は通常herringbone型の結晶構造を与えることが知られているが、我々は同分子系の特定の位置にメチルチオ基を導入することで、ルブレン型結晶構造が選択的に得られることを見出した。更に単結晶有機トランジスタによりキャリア移動度を評価したところ、ルブレン型結晶構造をもつチエノアセン系有機半導体は対応するherringbone型のものよりも高い移動度を示すことを確認した。中でもπ電子系を拡張したアントラジチオフェン系ではルブレンと同等の高移動度を示すことが明らかとなり、本分子修飾法が高移動度有機半導体開発において有用であることを見出した。
チエノアセン系有機半導体の結晶構造制御