トポロジカル絶縁体とトポロジカル超伝導体を分類する
現代のITを支えるエレクトロニクスは、固体中の電子の量子力学的な運動を記述するバンド理論に基づいている。バンド理論によって金属・絶縁体・半導体の物性が説明され、トランジスタの発明につながった。ところが、これまでのバンド理論では見逃されてきた重要な物理が、21世紀に入って新たに見つかった。電子波動関数が運動量空間で非自明なトポロジーをもつことによって生じる、トポロジカル絶縁体がそれである。さらに、準粒子励起にエネルギーギャップが存在する超伝導体にも、同様にトポロジカル超伝導体というものが存在する。トポロジカル絶縁体やトポロジカル超伝導体には様々な種類があることが知られている。
我々は、対称性にもとづいてトポロジカル絶縁体・超伝導体を分類する一般論を構築し、各空間次元で整数のトポロジカル数で分類されるトポロジカル絶縁体・超伝導体が3種類存在し、2値のトポロジカル数で分類されるトポロジカル絶縁体・超伝導体が2種類存在することを明らかにした。さらに、これらのトポロジカル絶縁体・超伝導体に対して、結晶格子のもつ対称性や電子間相互作用の効果を研究している。
連続変形で互いに移り変われるマグカップとドーナッツはトポロジー的には同じ形である。絶縁体中の電子の波動関数はトポロジーによって分類できる。