創発物性科学とは

多数の要素が集まったときに、個々の要素からは予測できなかった性質が現れることを、「創発性」といいます。例えば、膨大な数の電子が強く相互作用すると、1個の電子からは予測できないほど強力で巨大な電気的・磁気的な作用を生み出します。また、多数の分子を組み合わせることで、個々の分子にはなかった新しい機能を持つ物質を作ることができます。

このように電子や分子などが集合すると、個々の構成要素の単なる集合としては予測不可能な驚くべき物性や機能が現れます。創発現象の原理を明らかにし、新しい物性や機能を生み出そうという新しい学問領域を「創発物性科学」と呼びます。

例えば、金属や化合物を冷却していくとある温度以下で電気抵抗がゼロになる超伝導は、電子間の相互作用によって現れる創発現象の一つです。通常の超伝導は極低温で現れますが、それが、室温程度で起こる物質を設計・開発できれば、電力を損失なく送電することが可能になるでしょう。このように、創発物性科学は、私たちの生活に大革命をもたらし、環境調和型の持続可能な社会の実現に大きく貢献します。