研究目標
創発物性科学によって革新的なエネルギー機能を生み出し、人類の未来社会に貢献します。これまで、人類は、複数回にわたってエネルギー革命を通じて社会の変革を起こしてきました。産業革命は石炭の燃焼熱によって仕事を行うことが可能にしました。電磁気学は発電機や送電網を生み出し、人々の生活を大きく変容させました。その後、石炭は石油や天然ガスに変わられ、相対性理論に基づく核エネルギーの利用も進んでいます。創発物性科学研究センターは、固体中の電子集団がつくり出す機能を利用することで、新たなエネルギー革命を先導します。
創発物性科学研究センターのミッションは2つあります。
1つ目は、超高効率なエネルギーの収集・変換を実現することです。化石燃料を使わずに電力を得る太陽光発電などが注目されていますが、エネルギー変換効率の向上が課題です。超分子機能化学によって分子の配置を制御することで、変換効率を大幅に向上させた有機太陽電池を作るなど、エネルギー問題の解決につながる材料の創出を目指しています。また、強相関物理学では、固体中の強く絡み合っている多数の電子を制御することで、高効率で熱を電気に変換する技術を実現しようとしています。
2つ目のミッションは、超低エネルギー消費のエレクトロニクスを実現することです。現在の情報技術は大量のエネルギーを消費しています。強相関電子系では、わずかな電気刺激によって瞬時に金属状態と絶縁体状態が切り変わるという特性があります。こうした強相関電子系の現象を利用することで、消費電力がとても小さいメモリや回路の実現を目指します。また、大量の複雑な情報の高速処理を可能にする物理リザバー計算や半導体量子情報処理などの基盤技術を開発します。
創発物性科学研究センターは、物理学・化学・エレクトロニクスの3分野の連携によって、この2つのミッションを達成し、環境調和型の持続可能な社会を実現に貢献します。