計算量子物性研究チーム

主宰者

主宰者名 柚木 清司 Seiji Yunoki
学位 博士(工学)
役職 チームリーダー
略歴
1996 名古屋大学大学院工学研究科応用物理学専攻 博士課程修了
1996 米国 国立強磁場研究所 博士研究員
1999 オランダ グローニンゲン大学物質科学研究センター 博士研究員
2001 イタリア 高等研究所(SISSA)博士研究員
2006 米国 オークリッジ国立研究所/テネシー大学長期研究員/リサーチ准教授
2008 理化学研究所 柚木計算物性物理研究室 准主任研究員
2010 同 計算科学研究機構 研究部門 量子系物質科学研究チーム チームリーダー
2013 同 創発物性科学研究センター 強相関物理部門 計算量子物性研究チーム チームリーダー (現職)
2017 同 柚木計算物性物理研究室 主任研究員(現職)
2018 同 計算科学研究センター 研究部門 量子系物質科学研究チーム チームリーダー(現職)
2021 同 量子コンピュータ研究センター 量子計算科学研究チーム チームリーダー (現職)

研究室概要

固体中の電子は各物質の格子構造を反映したエネルギーバンド中を運動しているが、クーロン相互作用、電子-格子相互作用、スピン軌道相互作用といった様々な相互作用は電子の運動に非自明な効果を与え、興味深い量子現象を引き起こしている。当チームでは、これらの相互作用が協力的、あるいは競合的に働くことによって創発される様々な量子現象を、最新の計算物理学的手法を駆使して理論的に解明することを目指す。主に遷移金属酸化物、トポロジカル物質、およびそれらから作られたヘテロ構造体などを対象に、新奇な量子現象の発現機構の解明や、新物質創成の提案などを目指して研究を行っている。

研究分野

物理学、材料科学

キーワード

強相関電子系
磁性
超伝導
計算物性物理学

研究紹介

スピン軌道相互作用がもたらす新奇な絶縁体のメカニズムと超伝導の可能性

固体中の電子はクーロン相互作用、電子-格子相互作用、スピン軌道相互作用といった様々な影響の下で運動し、各物質固有の性質を生み出している。中でも近年、スピン軌道作用がもたらす興味深い物性に対する理解が進展し、注目を集めている。その一例である5d電子系遷移金属酸化物Sr2IrO4では、強いスピン軌道相互作用によってスピンと軌道の自由度が複雑に絡み合い、特異な量子状態が形成されていると考えられている。また、銅酸化物高温超伝導体の母物質と複数の類似点を持つことから、新たな超伝導物質の候補としても期待が持たれている。

当チームでは、複数の数値計算手法を用いてSr2IrO4をモデル化した3軌道ハバード模型の詳細な電子状態を解析した。その結果、強いスピン軌道相互作用の下で有効的な全角運動量Jeff=1/2が良い量子数となり、スピンと軌道が結合して出来た”擬スピン”が秩序化した反強磁性絶縁体(図(a)のx-AFI)が実現することを明らかにした。また、この絶縁体に電子をドープすることでdx2-y2波“擬スピン一重項”超伝導(図(b)のSC)が誘起され得ることを理論的に提案した。

図

スピン軌道相互作用を取り入れた3軌道ハバード模型の基底状態相図(a) 電子密度n=5、(b) n>5

メンバー一覧

柚木 清司 Seiji Yunoki

チームリーダー yunoki[at]riken.jp

新城 一矢 Kazuya Shinjo

研究員

主要論文

  1. H. Watanabe, T. Shirakawa, K. Seki, H. Sakakibara, T. Kotani, H. Ikeda, and S. Yunoki

    Monte Carlo study of cuprate superconductors in a four-band d-p model: role of orbital degrees of freedom

    J. Phys.: Condens. Matter 35, 195601 (2023)
  2. K. Shinjo, S. Sota, S. Yunoki, and T. Tohyama

    Controlling inversion and time-reversal symmetries by subcycle pulses in the one-dimensional extended Hubbard model

    Phys. Rev. B 107, 195103 (2023)
  3. H. Watanabe, T. Shirakawa, K. Seki, H. Sakakibara, T. Kotani, H. Ikeda, and S. Yunoki,

    Unified description of cuprate superconductors suing a four-band d-p model

    Phys. Rev. Research 3, 033157 (2021)
  4. F. Lange, S. Ejima, J. Fujimoto, T. Shirakawa, H. Fehske, S. Yunoki, and S. Maekawa

    Generation of current vortex by spin current in Rashba systems

    Phys. Rev. Lett. 126, 157202 (2021)
  5. T. Kaneko, T. Shirakawa, S. Sorella, and S. Yunoki

    Photoinduced eta Pairing in the Hubbard Model

    Phys. Rev. Lett. 122, 077002 (2019)

研究紹介記事