動的創発物性研究チーム

主宰者

主宰者名 賀川 史敬 Fumitaka Kagawa
学位 博士(工学)
役職 チームリーダー
略歴
2006 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 博士課程修了
2006 日本学術振興会特別研究員(PD)
2007 科学技術振興機構 ERATO十倉マルチフェロイックスプロジェクト 研究員
2010 東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター 特任講師
2012 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 講師
2013 理化学研究所 創発物性科学研究センター 統合物性科学研究プログラム 動的創発物性研究ユニット ユニットリーダー
2017 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 准教授
2022 東京工業大学理学院物理学系 教授 (現職)
2022 理化学研究所 創発物性科学研究センター 動的創発物性研究チーム チームリーダー (現職)

研究室概要

当チームでは、バルク試料及びデバイス化された強相関電子系が示す創発物性の動的側面を解明し、その学理構築を推進する。特に、トポロジカルな磁気秩序やドメイン壁などのサブミクロンスケールの構造体が外場下において示す動的現象について、ミリヘルツからギガヘルツ領域にわたる誘電応答や電気抵抗揺らぎなどのスペクトロスコピーを適用すると共に、走査型プローブ顕微鏡を用いた実空間観測及び局所物性計測も相補的に行なう。これらの知見を基に、物質中のトポロジカルな構造体が示す新奇物性の開拓・制御を目指す。

研究分野

物理学、材料科学

キーワード

強相関電子系
相制御
走査型プローブ顕微鏡
スペクトロスコピー

研究紹介

競合秩序相の背後に隠れた超伝導相を発現させる動力学的アプローチ

強相関電子系において超伝導状態の発現はしばしば、熱力学的により安定な磁気/電荷秩序相の形成によって妨げられている。そのため、超伝導を発現させるには物理圧力や化学圧力、キャリア濃度などの熱力学パラメータを制御して、超伝導相と競合秩序相の自由エネルギーバランスを変化させ、超伝導相の自由エネルギーが熱力学的に最安定となるように調整する必要があった。このような従来の熱力学的アプローチに対し、当チームでは競合秩序相の形成を避け超伝導を発現させる新しい手法として“動力学的アプローチ”を見出した。遷移金属ダイカルコゲナイドIrTe2という物質を原理実証の舞台として選び、電流パルスを用いた急冷法(最大で~107 K/sの急冷が可能)により、競合する電荷秩序相への1次相転移を動的に避け、その背後にある超伝導相を準安定状態として発現させることに成功した。当チームで編み出した手法によって、準安定超伝導相の不揮発かつ可逆なスイッチングがパルス印加で可能となり、これは動力学的アプローチを用いた手法に特有な強みと言える。以上のことから、今回の発見は超伝導の発現と制御という文脈において新しい展開をもたらすものと期待される。

超急冷法を用いた超伝導の発現の概念図(左)、実験に用いた薄片試料(右上)と電流パルス印加を用いた超伝導-非超伝導の不揮発相制御の電気抵抗測定による実証(右下)

メンバー一覧

賀川 史敬 Fumitaka Kagawa

チームリーダー fumitaka.kagawa[at]riken.jp

野本 哲也 Tetsuya Nomoto

特別研究員

Samiran Banu

特別研究員

佐藤 拓朗 Takuro Sato

客員研究員

松浦 慧介 Keisuke Matsuura

客員研究員

主要論文

  1. M. Wang, K. Tanaka, S. Sakai, Z. Wang, K. Deng, Y. Lyu, C. Li, D. Tian, S. Shen, N. Ogawa, N. Kanazawa, P. Yu, R. Arita, and F. Kagawa

    Emergent zero-field anomalous Hall effect in a reconstructed rutile antiferromagnetic metal

    Nat. Commun. 14, 8240 (2023)
  2. S. Furuta, S. H. Moody, K. Kado, W. Koshibae, and F. Kagawa

    Energetic perspective on emergent inductance exhibited by magnetic textures in the pinned regime

    npj Spintronics 1, 1 (2023)
  3. K. Matsuura, Y. Nishizawa, Y. Kinoshita, T. Kurumaji, A. Miyaka, H. Oike, M. Tokunaga, Y. Tokura, and F. Kagawa

    Low-temperature hysteresis broadening emerging from domain-wall creep dynamics in a two-phase competing system

    Commun. Phys. 4, 71 (2023)
  4. T. Sato, W. Koshibae, A. Kikkawa, Y. Taguchi, N. Nagaosa, Y. Tokura, and F. Kagawa

    Nonthermal current-induced transition from skyrmion lattice to nontopological magnetic phase in spatially confined MnSi

    Phys. Rev. B 106, 144425 (2022)
  5. H. Oike, M. Kamitani, Y. Tokura, and F. Kagawa

    Kinetic approach to superconductivity hidden behind a competing order

    Sci. Adv. 4, aau3489 (2018)

研究紹介記事