創発機能高分子研究チーム

主宰者

主宰者名 伹馬 敬介 Keisuke Tajima
学位 工学博士
役職 チームリーダー
略歴
2002 東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻 博士課程修了
2002 ノースウエスタン大学 博士研究員
2004 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻 助手
2009 同 講師
2011 同 准教授
2011 独立行政法人科学技術振興機構 さきがけ研究者(-2017)
2012 理化学研究所 創発機能高分子研究チーム チームリーダー
2013 同 創発物性科学研究センター 超分子機能化学部門 創発機能高分子研究チーム チームリーダー (現職)

研究室概要

当チームでは、新規な有機半導体高分子材料の開発と、それらの有機電子デバイスへの応用に取り組んでいる。特に、薄膜形成時における分子間の相溶性や相互作用を考慮した精密な有機半導体分子設計により、これまで基礎化学の範疇であった分子自己組織化を優れた機能に結びつけることを狙い、高分子薄膜中の分子レベル・ナノレベルの構造を自在に制御する手法を探求している。その結果として得られる、これまでにないレベルでの構造制御によって、電子デバイス性能を飛躍的に向上させるためのブレークスルーを探索している。ターゲットとしては、薄膜太陽電池や電界効果トランジスタなどの既存の有機電子デバイスに加えて、新規な機能を持ったデバイスの開発にも取り組んでいる。

研究分野

化学、工学、材料科学

キーワード

有機エレクトロニクス
有機薄膜太陽電池
高分子合成
自己組織化
ナノ構造制御

研究紹介

有機太陽電池の駆動に必要なエネルギーを解明

優れた特性を示す有機太陽電池素子を開発するためには、太陽電池に用いられる有機電子ドナーとアクセプターの2種類の材料の電子エネルギーを最適化する必要がある。しかし、そもそも太陽電池の駆動に必要な電子エネルギーの差はどのくらいなのか?という点が明らかにされておらず、最適化の明確な指針がない状態であった。

当チームで開発された手法による平面ヘテロ接合を使うことで、本質的な光電変換の素過程を研究することができた。平面ヘテロ接合界面近傍の電子エネルギーを様々な実験手法で正確に評価し、光電変換の外部量子収率と、材料の光学定数を用いた光学シミュレーションから電荷生成効率を求めた。電子ドナー材料4種類と電子アクセプター材料4種類、合計16個の素子を系統的に評価した結果、分子の励起状態と界面での電荷移動状態の間に0.2~0.3 eVのエネルギー差があれば、光を電流に効率的に変換できることを見いだした。一方で、これまで重要と考えられてきた電荷移動状態と自由電荷状態のエネルギー差は、電荷生成効率との明確な相関が見られなかった。この結果は、これまでの有機半導体開発の指針に修正を迫るものである。

図

平面ヘテロ接合界面の電子状態間のエネルギー差と電荷生成効率の相関

 

有機半導体薄膜の表面からの結晶化

高い結晶性を持つ有機半導体の薄膜を作成することは、電界効果トランジスタや太陽電池などの有機電子デバイスの高性能化のために不可欠である。そのために塗布中の溶媒乾燥時における核生成や結晶成長の制御が行われているが、動的で複雑なプロセスの制御が必要であった。また、基板からのエピタキシャル成長による制御も報告されているが、主に蒸着法に限られており、基板の種類にも制限があった。

当チームでは、表面に自発的に偏析する有機半導体分子を用いることで、有機薄膜の結晶化を表面から誘起することができるという新しい現象を見出した。成膜した後に加熱処理するという簡単な方法で、これまでにない高い結晶性を持つフラーレン化合物の薄膜を得ることができた。また表面から誘起された結晶の構造は、通常得られる多結晶薄膜とは全く異なる構造を持っており、薄膜の厚さ方向に結晶の向きが揃っていた。薄膜の高い結晶性により、薄膜の垂直方向の電子移動度が通常の多結晶薄膜に比べて5倍程度向上した。この新しい概念は、有機電子デバイスの高性能化に向けて一般的な重要性を持っている。

 

図

表面から結晶化したフラーレン化合物薄膜のX線回折パターン(左)と、それより得られた結晶構造(右)。
Reproduced with permission. Copyright 2018, Wiely-VCH. DOI: 10.1002/anie.201801173

メンバー一覧

伹馬 敬介 Keisuke Tajima

チームリーダー keisuke.tajima[at]riken.jp R

中野 恭兵 Kyohei Nakano

研究員

Chao Wang

基礎科学特別研究員

齋藤 仁志 Hitoshi Saito

基礎科学特別研究員

落合 優登 Yuto Ochiai

特別研究員

横山 高穂 Takaho Yokoyama

特別研究員

加地 由美子 Yumiko Kaji

テクニカルスタッフII

Wei-Chih Wang

国際プログラム・アソシエイト

鈴木 遼 Ryo Suzuki

研修生

主要論文

  1. K. Nakano, K. Terado, Y. Kaji, H. Yoshida, and K. Tajima

    Reduction of Electric Current Loss by Aggregation-Induced Molecular Alignment of a Non-Fullerene Acceptor in Organic Photovoltaics

    ACS Appl. Mater. Interfaces 13, 60299-60305 (2021)
  2. F. Wang, K. Nakano, H. Segawa, K. Tajima

    Inversion of Circular Dichroism Signals in Chiral Polythiophene Films Induced by End-On-Oriented Surface-Segregated Monolayers

    ACS Appl. Mater. Interfaces 13, 7510 (2021)
  3. C. Wang, H. Hao, D. Hashizume, and K. Tajima

    Surface-induced enantiomorphic crystallization of achiral fullerene derivatives in thin films

    Chem. Sci. 11, 4702 (2020)
  4. W.-C. Wang, S.-Y. Chen, Y.-W. Yang, C.-S. Hsu, and K. Tajima

    Face-on reorientation of pi-conjugated polymers in thin films by surface-segregated monolayers

    J. Mater. Chem. A 8, 6268 (2020)
  5. K. Nakano, Y. Chen, B. Xiao, W. Han, J. Huang, H. Yoshida, E. Zhou, and K. Tajima

    Anatomy of the energetic driving force for charge generation in organic solar cells

    Nat. Commun. 10, 2520 (2019)

研究紹介記事