創発分子集積研究ユニット

主宰者

主宰者名 佐藤 弘志 Hiroshi Sato
学位 博士(工学)
役職 ユニットリーダー
略歴
2008 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 博士課程修了
2008 科学技術振興機構 ERATO北川統合細孔プロジェクト 研究員
2010 京都大学 物質―細胞統合システム拠点 特任助教
2012 京都大学 物質―細胞統合システム拠点 特定拠点助教
2014 東京大学大学院工学系研究科化学生命工学攻 講師
2020 東京大学大学院工学系研究科化学生命工学攻 准教授
2020 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 さきがけ研究員
2021 理化学研究所 創発物性科学研究センター 統合物性科学研究プログラム 創発分子集積研究ユニット ユニットリーダー (現職)
2023 広島大学 持続可能性に寄与するキラルノット超物質拠点 特任教授(現職)

研究室概要

当ユニットでは分子の集合・集積・配列様式を制御することで分子が持つ潜在性を引き出し、単一分子では実現不可能な破格の機能を創発することを目指している。具体的な研究テーマは次の通りである。
(1)トポロジカル結合の自在配列による材料創製:カテナンなどの『トポロジカル結合』の自在配列により、『結晶性』と『適応性』を併せ持つ新材料の創出を行う。
(2)超分子重合における配列制御:『超分子重合』では、ポリマー中のモノマー配列制御は困難である。配位結合に基づく『配位高分子』における配列制御に挑戦する。

研究分野

化学/材料科学

キーワード

自己組織化
結晶工学
多孔質材料
表面・界面

研究紹介

トポロジカル結合からなる多孔性結晶

当ユニットでは、2つのリング状分子が鎖状につながったカテナン分子と金属イオンとを配位結合を通じて3次元的に精密に配列させ、結晶を作製することに世界で初めて成功した。単結晶X線構造解析を用いてこの結晶の構造を調べたところ、結晶の90%以上がカテナン分子からできていること、多数の微小な穴が空いた構造をしていること、温度変化に伴って構造を変えることなどが分かった。さらに、外から力を加えると形が変わり、力を除くと元の形に戻る、結晶でありながらまるでゴムのような性質を示すことを明らかにした。指でつまんだり離したりすることで、二酸化炭素などの気体分子を吸脱着できる革新的な多孔性材料の応用などにつながると期待できる。

図

カテナンからできた柔軟な多孔性結晶

 

光に応答する多孔性結晶

金属−有機構造体(Metal–Organic Frameworks、MOF)は金属イオンと有機配位子から構築される多孔質材料であり、配位結合によって支えられた多様な細孔は、ガス分離膜などへの応用が展開されている。一般的に、ゲスト分子を取り込みやすいMOFは、ゲスト分子を放出しにくく、取り込みと放出は往々にしてトレードオフの関係となる。我々は、光反応性分子であるジアリールエテン誘導体からなるMOFを開発し、このジレンマに挑戦している。このMOFは、紫外光を照射することで溶液にし、また可視光を照射すると再構築させることができる。この崩壊・再構築に伴って、さまざまなゲスト分子の放出・取り込みを行うことが可能となった。

図

光で何度でも壊したり再構築することができる多孔性結晶

メンバー一覧

佐藤 弘志 Hiroshi Sato

ユニットリーダー hiroshi.sato[at]riken.jp

Naeimeh Bahrilaleh

客員研究員

Wei Yuan

研修生

主要論文

  1. W. Meng, S. Kondo, T. Ito, K. Komatsu, J. Pirillo, Y. Hijikata, Y. Ikuhara, T. Aida, and H. Sato

    An elastic metal-organic crystal with a densely catenated backbone

    Nature 598, 298 (2021)
  2. H. B. Huang, H. Sato, J. Pirillo, Y. Hijikata, Y. S. Zhao, S. Z. D. Cheng, and T. Aida

    Accumulated Lattice Strain as an Internal Trigger for Spontaneous Pathway Selection

    J. Am. Chem. Soc. 143, 15319-15325 (2021)
  3. H. Sato, T. Matsui, Z. Chen, J. Pirillo, Y. Hijikata, and T. Aida

    Photochemically Crushable and Regenerative Metal-Organic Framework

    J. Am. Chem. Soc. 142, 14069 (2020)
  4. J. M. Lee, and H. Sato

    Photoswitching to the core

    Nat. Chem. 12, 584–585 (2020)
  5. S. Suginome, H. Sato, A. Hori, A. Mishima, Y. Harada, S. Kusaka, R. Matsuda, J. Pirillo, Y. Hijikata, and T. Aida

    One-Step Synthesis of an Adaptive Nanographene MOF: Adsorbed Gas-Dependent Geometrical Diversity

    J. Am. Chem. Soc. 141, 15649 (2019)