創発光物性研究グループ

主宰者

主宰者名 小川 直毅 Naoki Ogawa
学位 Ph.D.
役職 グループディレクター
略歴
2004 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 博士課程修了
2004 米国 カリフォルニア大学アーバイン校 博士研究員
2004 日本学術振興会 特別研究員(PD)
2006 東京大学 先端科学技術研究センター 特任助手
2008 同 助教
2012 理化学研究所 強相関量子科学研究グループ 基幹研究所研究員
2013 同 創発物性科学研究センター 上級研究員
2015 同 創発物性科学研究センター 創発光物性研究ユニット ユニットリーダー
2017 科学技術振興機構 さきがけ研究者
2018 同 創発物性科学研究センター 創発光物性研究チーム チームリーダー
2020 東京大学大学院工学系研究科 教授(委嘱)
2024 理化学研究所 創発物性科学研究センター センター長室長(現職)
2024 理化学研究所 創発物性科学研究センター 創発光物性研究グループ グループディレクター(現職)

研究室概要

強い電子相関やスピン軌道相互作用、トポロジーなどを特徴とするバルク結晶および薄膜・界面において、創発光物性の探索と非平衡電子・スピンの制御を行う。特に光の有する広範なスペクトル、フェムト秒の時間分解能、偏光の自由度等を駆使し、シフト/インジェクション電流の超高速分光、ディラック/ワイル電子によるスピン流生成やトポロジカル磁気秩序の操作等、物質に根ざした新規物性の開拓、精密計測、また素励起の時空間伝搬の可視化を目指す。

研究分野

物理学、工学、材料科学

キーワード

強相関電子系
量子物質
超高速/広帯域分光
光電流分光
光スピントロニクス

研究紹介

光第二次高調波発生のダイオード効果

空間反転対称性と時間反転対称性が同時に破れたマルチフェロイック物質では、光の進行方向の反転により光応答が変化する非相反光学効果が生じる。これまで、透過、発光、散乱、屈折等、線形光学過程において多彩な非相反効果が報告されてきた。我々は非線形光学過程における非相反効果に着目し、CuB2O4における非相反光第二次高調波発生の観測を行った。非相反光学効果は磁気双極子遷移と電気双極子遷移の干渉によって生じる。一般に前者は後者よりも圧倒的に小さいため、通常は非相反性が無視できるほど小さい。我々は、Cuサイトの磁気双極子遷移が共鳴励起によって増大し、非共鳴の電気双極子遷移と同程度の大きさを持つことを発見した。その結果、両者が同位相、同振幅で干渉し、高調波発生強度が97%変化するほぼ完全な非線形非相反光学効果を実現した。さらに、この非相反性がわずか10 mTの磁場によって反転可能であることを示した。

(左)非相反第二次高調波発生の模式図 (右)SHG強度の磁場依存性

 

シフトカレントの超高速スペクトル

空間反転対称性の破れたバルク結晶に光を照射すると、バンド間励起にともなって電子雲の重心が実空間で変位する「シフトカレント」が発生する。シフトカレントは電子軌道のトポロジーを反映しており、超高速、低散逸、起電力がバンドギャップエネルギーを大きく超える等、従来の太陽電池や光センサーには無い特徴を有する。我々は、フェムト秒レーザーを用いてシフト電流を駆動し、その電荷運動が放射するTHz電磁波を分光することにより、励起素過程を追跡した。結果、光子の吸収に際して電子雲は瞬時にその位置を移動すること、偏光に対するテンソル応答、散乱をともなったバンド内緩和、また実験で得られた励起スペクトルと結晶構造をもとにした第一原理計算が定量的に良い一致を示すことなど、強誘電性半導体や極性半導体中におけるシフトカレントの基礎物性が明らかとなった。

図

光照射によるシフトカレント発生と、シフトカレントからのTHz電磁波放射

 

トポロジカル磁気秩序の光励起ダイナミクス

サブピコ秒の光パルスを用いて物質中のスピンを制御することにより、高速の磁気メモリや全光素子‐磁気素子の直接接続などの実現が可能となる。その一手法としてパルス光による光磁気効果の研究が進展している。これは、スピン軌道相互作用の強い物質にパルス円偏光を照射した際、大きな有効磁場が発生しスピン系が応答する現象で、瞬時ラマン過程による逆ファラデー効果と呼ばれている。我々は次世代スピントロニクス媒体として期待されている磁気スキルミオンを逆ファラデー効果により瞬時励起し、カイラル磁性絶縁体Cu2OSeO3中のスキルミオンの回転・ブリージングのコヒーレント運動を明らかにした。また鉄ガーネット薄膜(YIG)においては、同様のラマン励起により磁気弾性波(スピン波と格子振動の結合モード)を発生することに成功し、その時空間発展のイメージング分光を行った。磁気弾性波は磁壁や磁気バブルドメイン(スキルミオン)と引力相互作用を示すこと、またその大きさは一般に磁気構造の曲率に依存することを明らかにした。

図

(a) パルス円偏光による瞬時ラマン励起の模式図
(b) スキルミオン励起の磁気光学応答
(c) 光励起磁気弾性波の磁気光学顕微像(励起から6ナノ秒後)
(d) 磁気弾性波によるバブルドメインの操作

メンバー一覧

小川 直毅 Naoki Ogawa

グループディレクター naoki.ogawa[at]riken.jp

Manfred Fiebig

客員主管研究員

豊田 新悟 Shingo Toyoda

研究員 shingo.toyoda[at]riken.jp

高木 翼 Tsubasa Takagi

大学院生リサーチ・アソシエイト

Lucille Liliane Jany Ascenci

実習生

主要論文

  1. Z. Wang, X.-X. Zhang, Y. Shiomi, T. Arima, N. Nagaosa, Y. Tokura, and N. Ogawa

    Exciton-magnon splitting in van der Waals antiferromagnet MnPS3 unveiled by second-harmonic generation

    Phys. Rev. Research 5, L042032 (2023)
  2. S. Toyoda, J.-C. Liao, G.-Y. Guo, Y. Tokunaga, T.-h. Arima, Y. Tokura, and N. Ogawa

    Magnetic-field switching of second-harmonic generation in noncentrosymmetric magnet Eu2MnSi2O7

    Phys. Rev. Mater. 7, 024403 (2023)
  3. S. Toyoda, M. Fiebig, L. Forster, T.-h. Arima, Y. Tokura, and N. Ogawa

    Writing of strain-controlled multiferroic ribbons into MnWO4

    Nat. Commun. 12, 6199 (2021)
  4. S. Toyoda, M. Fiebig, T. Arima, Y. Tokura, and N. Ogawa

    Nonreciprocal second harmonic generation in a magnetoelectric material

    Sci. Adv. 7, eabe2793 (2021)
  5. M. Sotome, M. Nakamura, J. Fujioka, M. Ogino, Y. Kaneko, T. Morimoto, Y. Zhang, M. Kawasaki, N. Nagaosa, Y. Tokura, and N. Ogawa

    Spectral dynamics of shift current in ferroelectric semiconductor SbSI

    Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 116, 1929 (2019)

研究紹介記事