極限量子固体物性理研ECL研究ユニット

主宰者

主宰者名 藤代 有絵子 Yukako Fujishiro
役職 理研ECL研究ユニットリーダー
HP https://sites.google.com/view/yukako-fujishiro/home?authuser=0
略歴
2021 東京大学工学系研究科物理工学専攻 博士課程修了
2021 理化学研究所 創発物性科学研究センター 強相関物性研究グループ 基礎科学特別研究員
2024 理化学研究所 創発物性研究センター 統合物性科学研究プログラム 極限量子固体物性理研ECL研究ユニット 理研ECL研究ユニットリーダー(現職, 本務)
2024 理化学研究所 開拓研究本部 藤代極限量子固体物性理研ECL研究ユニット 理研ECL研究ユニットリーダー(現職, 兼務)

研究室概要

当ユニットでは、「極限」環境に焦点を当て、磁性トポロジカル物質や強相関電子系の創発現象に関する基礎学理の構築を行う。具体的には、収束イオンビーム(FIB)法による量子物質単結晶の微細加工技術を駆使することで、数十ギガパスカル級の超高圧下での精密な磁気輸送特性の測定、高密度電流を利用した磁気構造ダイナミクスの探索、そしてバルク層状物質におけるイオン液体を用いたキャリア数のゲート電圧制御などを可能にする。これらの技術を駆使して、新たな量子相の開拓と量子伝導機能の解明に挑戦する。

研究分野

物理学/工学/材料科学

キーワード

磁性トポロジカル物質
強相関電子系
電荷輸送現象
インターカレーション
超高圧

研究紹介

超高圧下で探るトポロジカル磁気相転移

固体中における新規量子相の探索は、近年の物性物理学における中心的課題の一つである。特に、長距離磁気秩序がゼロ温度で消失する量子相転移の近傍では、非フェルミ液体、反強磁性揺らぎによる高温超伝導、強磁性揺らぎによる非従来型超伝導など、新しい量子相の発現が注目されている。

我々は、らせん磁性や磁気スキルミオンが示す量子相転移に着目し、カイラル磁性体FeGe に超高圧(〜50 GPa)を印加することで、特異な量子相を発見した。具体的には、バンド構造の劇的な変化による金属−絶縁体転移を観測したほか、短距離磁気秩序が発達する量子相転移後(20–30 GPa)の領域において、長距離磁気秩序が存在しないにも関わらず、時間反転対称性を破る自発的な異常ホール効果を観測した。この異常ホール効果の起源は既存の理論では説明することができず、カイラルな系における量子揺らぎによる新奇な現象であると考えられる。

今回の研究では、FIB技術を駆使して精密な磁気輸送特性の測定を可能にした。これにより、これまで未開拓であった数十GPa級の超高圧領域における新奇量子相を、様々な量子物質で開拓できると期待している。

図(a), (b), (c), (d)

(a) カイラル磁性体FeGeにおけるらせん磁性と磁気スキルミオンの模式図。(b) 実験に使用したダイヤモンドアンビルセルの写真と模式図。(c) 温度―圧力相図における電気抵抗の変化。(d) 量子相転移の近傍で増強する自発的異常ホール効果とホール伝導度のカラープロット。

メンバー一覧

藤代 有絵子 Yukako Fujishiro 理研ECL研究ユニットリーダー yukako.fujishiro[at]riken.jp

鈴木 勇力 Yuri Suzuki

研修生

主要論文

  1. Y. Fujishiro, N. Kanazawa, R. Kurihara, H. Ishizuka, T. Hori, F. S. Yasin, X.Z. Yu, A. Tsukazaki, M. Ichikawa, M. Kawasaki, N. Nagaosa, M. Tokunaga, and Y. Tokura

    Giant anomalous Hall effect from spin-chirality scattering in a chiral magnet

    Nat. Commun. 12, 317 (2021)
  2. M. Tanaka, Y. Fujishiro, M. Mogi, Y. Kaneko, T. Yokosawa, N. Kanazawa, S. Minami, T. Koretsune, R. Arita, S. Tarucha, M. Yamamoto, and Y. Tokura

    Topological Kagome Magnet Co3Sn2S2 Thin Flakes with High Electron Mobility and Large Anomalous Hall Effect

    Nano Lett. 20, 7476-7481 (2020)
  3. Y. Fujishiro, N. Kanazawa, and Y. Tokura

    Engineering skyrmions and emergent monopoles in topological spin crystals

    Appl. Phys. Lett. 116, 090501 (2020)
  4. Y. Fujishiro, N. Kanazawa, T. Nakajima, X. Z. Yu, K. Ohishi, Y. Kawamura, K. Kakurai, T. Arima, H. Mitamura, A. Miyake, K. Akiba, M. Tokunaga, A. Matsuo, K. Kindo, T. Koretsune, R. Arita, and Y. Tokura

    Topological transitions among skyrmion- and hedgehog-lattice states in cubic chiral magnets

    Nat. Commun. 10, 1059 (2019)
  5. Y. Fujishiro, N. Kanazawa, T. Shimojima, A. Nakamura, K. Ishizaka, T. Koretsune, R. Arita, A. Miyake, H. Mitamura, K. Akiba, M. Tokunaga, J. Shiogai, S. Kimura, S. Awaji, A. Tsukazaki, A. Kikkawa, Y. Taguchi, and Y. Tokura

    Large magneto-thermopower in MnGe with topological spin texture

    Nat. Commun. 9, 408 (2018)

お問い合わせ

〒351-0198

埼玉県和光市広沢2-1

E-mail:
yukako.fujishiro[at]riken.jp

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