創発ソフトマター機能研究グループ

主宰者

主宰者名 相田 卓三 Takuzo Aida
学位 工学博士
役職 グループディレクター
略歴
1984 東京大学大学院工学系研究科合成化学専攻 博士課程修了
1984 同 助手/講師
1991 同 助教授
1996 同 教授
2000 科学技術振興事業団 ERATO相田ナノ空間プロジェクト 総括責任者
2007 理化学研究所 物質情報変換化学研究グループ グループディレクター
2010 同 機能性ソフトマテリアル研究グループ グループディレクター
2011 同 光電変換研究チーム チームリーダー
2013 同 創発物性科学研究センター 副センター長
2013 同 超分子機能化学部門 創発ソフトマター機能研究グループ グループディレクター (現職)
2022 東京大学 卓越教授(現職)

研究室概要

地球規模のエネルギー問題・環境問題に世界的な注目が集まる中、化学者に課せられた責務は重大である。当グループでは、分子レベル・ナノレベルでの構造や物性を精密に制御した材料の開発を通じ、これらの問題解決に繋がる材料科学の学理樹立を目指す。具体的には、(1)ユビキタス元素からなる新規有機触媒による高効率な水の光分解法の開発、(2)溶液キャストで得られる高密度メモリー(有機強誘電体)の開発、ならびに(3)超分子ポリマーの精密重合法の開発を目指し、日々研究に取り組んでいく。

研究分野

化学、材料科学

キーワード

ソフトマテリアル
分子設計
自己組織化
エネルギー変換
生体模倣
刺激応答材料
電子機能材料
光電変換材料
環境低負荷材料

研究紹介

水を超高速で通すにもかかわらず塩を通さないフッ素ナノチューブ

持続可能な社会を実現する上で海水の淡水化は必要不可欠な課題であり、これまでさまざまな水処理膜が開発されている。海水を高速に淡水化する技術の開発は2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)の1つとして取り上げられているが、地球規模の飲料水不足を解決するには、現在用いられている水処理膜の能力を破格に高める必要がある。水処理膜の能力をあげるための基礎研究においては、これまで「アクアポリン」が注目されてきた。これまで、アクアポリンの構造と性能に触発され、カーボンナノチューブなどアクアポリンを模倣したさまざまなナノチューブが報告されているが、アクアポリンの性能を大きく超えるものは報告されていない。

今回、当グループは、内側にフッ素原子が密に結合した大環状化合物を、超分子重合と呼ばれる手法で一列に重ねることで、内壁がテフロンのように密にフッ素で覆われたフッ素化ナノチューブを得た。このナノチューブの水透過能と塩除去能を評価したところ、アクアポリンの4500倍の水透過能をもちながらも塩を通さないことが明らかになった。

figure

超高速水透過を可能にするフッ素化ナノチューブとその内径依存性

原料を混ぜるだけ、超分子ポリマーの精密合成法の開発

原料を混ぜるだけで合成でき、容易にリサイクルが可能な超分子ポリマーは、次世代の材料として注目を集めている。しかしながら超分子重合は本質的に逐次重合の機構で進行するため、長さや多分散度を制御した精密合成が実現できていなかった。当グループではコラヌレンと呼ばれるお椀状分子を用いることで、側鎖のアミド基を分子内で環状に水素結合を形成させ、モノマーの自発的な超分子重合(モノマー間での分子間水素結合形成)を抑制することに成功した。また同時に、モノマーのアミド基をメチル化した誘導体が開始剤として働くことを見出した。この開始剤とモノマーを常温・常圧で混ぜると、開始剤とモノマーの仕込み比に応じた単分散の超分子ポリマーが得られ、超分子重合を連鎖重合様式で実現することに初めて成功した。混ぜるだけで精密に超分子ポリマーを合成できる本手法は、今後の材料科学において様々な応用が期待される。

図

超分子連鎖重合の模式図

メンバー一覧

相田 卓三 Takuzo Aida

グループディレクター takuzo.aida[at]riken.jp

三苫 伸彦 Nobuhiko Mitoma

研究員

Hubiao Huang

研究員

Abir Goswami

基礎科学特別研究員

桑山 元伸 Motonobu Kuwayama

テクニカルスタッフI

犬塚 寛之 Hiroyuki Inuzuka

テクニカルスタッフI

小布施 聖 Sei Obuse

研究パートタイマーI

Yiren Cheng

研修生

Gangfeng Chen

大学院生リサーチ・アソシエイト

Yang Hong

大学院生リサーチ・アソシエイト

Jinxu Liu

大学院生リサーチ・アソシエイト

主要論文

  1. Pathway Complexity in Nanotubular Supramolecular Polymerization: Metal-Organic Nanotubes with a Planar-Chiral Monomer

    Pathway Complexity in Nanotubular Supramolecular Polymerization: Metal-Organic Nanotubes with a Planar-Chiral Monomer

    J. Am. Chem. Soc. 145, 13920-13928 (2023)
  2. Y. Itoh, S. Chen, R. Hirahara, T. Konda, T. Aoki, T. Ueda, I. Shimada, J. J. Cannon, C. Shao, J. Shiomi, K. Tabata V, H. Noji, K. Sato, and T. Aida

    Ultrafast water permeation through nanochannels with a densely fluorous interior surface

    Science 376, 738-743 (2022)
  3. Z. Chen, Y. Suzuki, A. Imayoshi, X. F. Ji, K. V. Rao, Y. Omata, D. Miyajima, E. Sato, A. Nihonyanagi, and T. Aida

    Solvent-free autocatalytic supramolecular polymerization

    Nat. Mater. 21, 253-261 (2022)
  4. W. Meng, S. Kondo, T. Ito, K. Komatsu, J. Pirillo, Y. Hijikata, Y. Ikuhara, T. Aida, and H. Sato

    An elastic metal-organic crystal with a densely catenated backbone

    Nature 598, 298 (2021)
  5. Y. Yanagisawa, Y. Nan, K. Okuro, and T. Aida

    Mechanically robust readily repairable polymers via tailored noncovalent cross-linking

    Science 359, 72 (2018)

研究紹介記事