研究紹介記事
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- 2021年11月22日 Heat flow controls the movement of skyrmions in an insulating magnet
- Magnetic vortices could be manipulated by waste heat to realize low-power computing applications
主宰者名 | Xiuzhen Yu | ||||||||||||||||||
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学位 | 理学博士 | ||||||||||||||||||
役職 | チームリーダー | ||||||||||||||||||
略歴 |
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当チームは、原子レベル空間分解能を有する電子顕微鏡を駆使して、強相関電子秩序やスキルミオンなどのトポロジカルスピンテクスチャーの微視的磁気状態とそのダイナミックスの実空間観察を行う。超高速電子線イメージングや微視的磁場・電場の定量計測をはじめとする各種電子線分光法を用いて、高温超伝導材料、遷移金属カルコゲナイト材料、極性強磁性材料やへテロ界面薄膜などの電子結合状態、元素分布、界面構造、相転移などに関する知見を得る。このようなナノスケール電子状態マイクロスコピーの研究により、強相関電子材料における創発現象の発見、さらには次世代のメモリ素子への応用を展開する。
物理学、工学、材料科学
電子状態
ローレンツ顕微鏡法
分析電子顕微鏡法
高分解能電子顕微鏡法
位相差顕微鏡法
三次元磁気構造イメージング
スキルミオンはトポロジカル数「-1」を有しトポロジカル粒子であり、基礎物性研究分野で大変注目されている。アンチスキルミオンは、スキルミオンと異なる特有の構造(Bloch line とBloch wallが交互に並べる)を持ち、トポロジカル数「+1」を有する。本研究は、「三次元トポロジカル磁気テクスチャ研究」に世界に先駆けて取り組むため、「高空間分解能の三次元磁化構造の顕微技法」を開発し、試料中に現れるスキルミオン紐やアンチスキルミオンなどの三次元トポロジカル磁化構造を直接観察する。具体的に、対象試料を電子顕微鏡中に傾斜させ、多方位から三次元磁気構造の二次元投映像を系統的に撮影する。得られた二次元シリーズ像から三次元像の再構築アルゴリズムを開発した。この三次元電子顕微技法を用いて、変形したスキルミオン紐(図1a)の直接観察を行った(図1c)。また、デュアル傾斜シリーズのローレンツ電顕像を解析し、アンチスキルミオン(図1c)の三次元位相像(図1d)が得られ、その三次元ベクトル場の分布(図1e-1f)の顕微観察に成功した。本研究は、トポロジカル磁気テクスチャに特有な3次元磁化配列を明らかにした。
スキルミオン(Sk)はトポロジカル数「-1」を有しトポロジカル粒子であるので、基礎物性研究分野やスピントロニクス分野で大変注目されている。Skは微小電流で移動させられることが提唱されているが、単一Skではまだ実証されていなかった。当チームは、小さな切り欠きをつけたらせん磁性体FeGe薄片に、磁壁駆動電流密度より3桁低い微小・超短パルス電流で直径80nmの単一SkとSkクラスターの移動に成功した。さらに、パルス電流の刺激によりSkクラスターの回転運動を初めて直接観察した。単一Skを生成するため、「切り欠き」をつけたらせん磁性体FeGeの薄片を作成した。この切り欠きの導入により局所的にスピン流が生成でき、電流で単一Skを誘起することが出来る。図aは電流下のSkホール運動の模式図である。ローレンツ顕微鏡を用いた実空間観察により、3個Skからなるクラスター(b)を電流パルスで刺激すると、クラスターは反時計回りに回転しながらホール運動することが世界で初めて観察された(図c-d)。さらに、磁壁を移動する電流閾値より3桁小さい超短電流パルスで、単一SkとSkクラスターのホール運動が観察された(図e-g)。
スキルミオンはトポロジカル数「-1」を有しトポロジカル粒子であるので、基礎物性研究分野やスピントロニクス分野で大変注目されている。スキルミオンの起因は空間反転対称性の破れた結晶構造を持つ物質におけるジャロシンスキー・守谷相互作用であることが提唱された。本研究では、空間反転対称性の破れがない結晶構造を持つ希土類合金GdRu2Si2において、既知の化合物では過去最小となるスキルミオンの正方格子の直接観察に成功した。この原子スケールのスキルミオンの起因は物質中の遍歴電子が媒介する新機構であることが明になった。図1aは観察されたスキルミオン正方格子の電子顕微鏡像を示す。周期的に並んだ原子像の上に、周期1.9 nmのスキルミオン(点線に囲んだ円状ドメイン)正方格子が重畳している様子が読み取れる。
一方、スキルミオンの反粒子、トポロジカル数「+1」を持つ「アンチスキルミオン」(図1d)の正方格子(図1b)は、Mn1.4Pt0.9Pd0.1Snの薄片中に観察され、外部磁場や試料温度を変えることで、アンチスキルミオンとスキルミオン(図1e-g)の相互変換やスキルミオンの回転方向を制御(図1c-g)することが直接観察された。
強いスピン・軌道相互作用により誘起されるスキルミオンはトポロジカル数1をもつ安定したトポロジカル粒子として振る舞うことから、物性物理学から磁気記憶素子への応用に向けて大変注目されている。一方、スキルミオンを生成できるらせん磁性体の面内磁気異方性の導入より、メロンと呼ばれる、トポロジカル数2分の1を持つ渦構造の形成が予測されているが、まだ実測されていない。本研究は面内磁気異方性を有するらせん磁性体Co8Zn9Mn3の薄片を用いて、様々な温度・磁場下での磁気構造の実空間観察を行った。
薄片に微小な磁場(20 mT)を加えたところ、メロンとアンチメロンの正方格子が生成されることをローレンツ電子顕微鏡の観察で分かった(図1(a)と(b))。観察された正方格子は理論で予測したメロンとアンチメロンの正方格子と良く一致することが明らかになった。外部磁場を徐々に大きくすると、メロンとアンチメロンは「スキルミオン」に変化し、その構造は正方格子から三角格子(図1(c)と(d))に変わることが分かった。
強相関電子材料は、わずかな刺激で電子相転移を起こし、数々の驚くべき創発物性を示す。最近注目されている一つの創発現象は、強いスピン・軌道相互作用により誘起されるナノメートルスケールのトポロジカルスピンテクスチャー、スキルミオンである。スキルミオンを構成するスピンは、並べ替えると一つの球面を覆いつくすものである。 このため、スキルミオンは、トポロジカル数1を持つ安定な粒子として振る舞う。特に、従来の磁気メモリ素子として使われている磁性体の磁壁と比べて数桁低い電流密度で駆動しうることから、スキルミオンを用いた次世代スピントロニクスの応用も期待されている。
スキルミオンは、創発磁場をもたらす特徴を有するため、電流をスキルミオンに流すと、伝導電子がこの創発磁場を受け、トポロジカルホール効果など新奇な電磁気効果が生じる。我々は、先端電子顕微鏡技法と微細加工技術を駆使し、電子顕微鏡の中で様々な物質中にスキルミオンを生成してその場観察を行い、スキルミオンの動的特性を見出す。
Xiuzhen Yu |
チームリーダー | yu_x[at]riken.jp | |
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Yi Ling Chiew |
技師 | ||
Yao Guang |
特別研究員 | ||
中島 清美 Kiyomi Nakajima |
テクニカルスタッフII | ||
柴田 基洋 Kiyou Shibata |
客員研究員 | ||
森川 大輔 Daisuke Morikawa |
客員研究員 | ||
中西 伸登 Nobuto Nakanishi |
客員研究員 |
Real-Space Observations of Three-Dimensional Antiskyrmions and Skyrmion Strings
Real-space observations of 60-nm skyrmion dynamics in an insulating magnet under low heat flow
Nanometric square skyrmion lattice in a centrosymmetric tetragonal magnet
Transformation between meron and skyrmion topological spin textures in a chiral magnet
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