研究室概要
光学と物質の相互作用は古くから物理学の主要な研究トピックのひとつである。スペクトロスコピーは物性現象を理解するために重要な役割を果たし、一方で物質中での創発現象が全く新しい光学現象を生み出すこともある。当ユニットでは、強相関電子系に現れる様々な新奇現象の光学応答に着目し、以下のテーマを中心とした研究を行っている。(1)誘電性と磁性の強い結合効果により現れる電気磁気光学効果の開拓。(2)光による磁性と誘電性の制御。(3)固体中のトポロジーにより生じる光応答の研究。これらの研究を通して、新しい光物性の開拓と、応用も視野に入れた光機能性の展開を目指している。
研究分野
キーワード
強相関電子系
マルチフェロイクス
テラヘルツ分光
超高速分光
非相反効果
研究紹介
エレクトロマグノンが示す新奇光学現象の発見
マルチフェロイックと呼ばれる物質系ではスピンの秩序に由来した強誘電性が現れる。この時スピンの集団運動においては振動する電気分極と磁化が強く結合したエレクトロマグノンと呼ばれる状態が出現する。我々は、代表的なマルチフェロイックであるらせん型に配列したスピンの運動が、電気分極と磁化の応答を併せ持つエレクトロマグノンであることを明らかにした。一方で、らせん型のスピン構造は右手系、左手系で区別されるカイラリティを持つ。通常物質のカイラリティは結晶構造により決定され、一度固定されたカイラリティを制御することは困難である。我々はらせん型スピン構造が電気分極を持つことを利用し、カイラリティの電場制御を実証した。エレクトロマグノンに共鳴する周波数を持つ透過光の偏光を観測すると、カイラリティの反転に伴い、偏光回転の符号が反転することを見出した。これは自然旋光性と呼ばれる現象であり、カイラリティの最も基本的な性質として知られている。この結果は、カイラリティを利用した光制御の可能性を示している。
らせんスピンがつくる自然旋光性とその制御