量子効果デバイス研究チーム

主宰者

主宰者名 石橋 幸治 Koji Ishibashi
学位 工学博士
役職 チームリーダー
略歴
1988 大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻電気工学分野 博士課程修了
1988 理化学研究所 国際フロンティア研究システム 研究員
1991 同 半導体工学研究室 研究員
1996 デルフト工科大学(オランダ) 訪問研究員
2003 理化学研究所 石橋極微デバイス工学研究室 主任研究員 (現職)
2003 千葉大学大学院 客員教授 (現職)
2005 東京理科大学大学院 連携教授 (現職)
2013 理化学研究所 創発物性科学研究センター 量子情報エレクトロニクス部門 量子効果デバイス研究チーム チームリーダー (現職)

研究室概要

当チームではナノスケールで発現する量子効果を利用した新機能・省エネルギーナノデバイスの研究開発を行っている。Si微細トランジスタ、カーボンナノチューブ、半導体ナノワイア、トポロジカル絶縁体、超伝導体などを用いて、ナノスケールで異種材料、異種機能をハイブリッド化する技術を開発するとともに、そこに発現する新しい量子現象を明らかにし、それを利用した新機能の探索を行う。それにより電子、スピン、光、励起子、クーパペアなどを制御する技術を開発し、量子情報デバイスなどへ応用する。

研究分野

工学、物理学

キーワード

カーボンナノチューブ
半導体ナノワイア
量子ドット
トポロジカル超伝導
量子情報デバイス

研究紹介

マヨラナ量子ビットへ向けた超伝導体/InAsナノワイアハイブリッド構造の研究

量子コンピュータの開発が活発に進められているが、量子状態を安定に維持するためにさけるべきデコヒーレンスやノイズの問題は、依然、大規模化に向けた大きな問題である。マヨラナ粒子をもちいたトポロジカル量子ビットは、安定に量子状態を保持できると考えられるため、この問題を大きく軽減できる新たな量子ビットとして期待できる。残念ながらマヨラナ粒子はその存在がいまだ実験的に確証が得られたとは言えない状況であるが、我々はマヨラナ量子ビットに向け半導体ナノワイアと超伝導体、トポロジカル絶縁体と超伝導体のハイブリッド構造を用いて研究を行っている。図はInAsナノワイアを分子線エピタキシー法で成長し、さらに真空を破ることなく超伝導体であるアルミニウムを蒸着することにより急峻な界面を持つSNS型ジョセフソン接合(S:超伝導体、N:正常金属)の電子顕微鏡写真を示す。本研究では、ナノワイアジョセフソン接合をもつRF-SQUIDループをマイクロ波共振器と結合することにより、マヨラナ束縛状態の分光測定を目指している。なお、本研究はThomas Schäpers教授(ドイツ・ユーリッヒ研究所)との共同研究である。

電子顕微鏡写真

InAsナノワイアとアルミニウムで作製したSNS型ジョセフソン接合の電子顕微鏡写真

 

ハイブリッド量子情報デバイスを目指したマイクロ波共振器中の量子ドットの研究

本研究では、量子ドットをマイクロ波回路共振器に埋め込んだハイブリッド量子情報デバイスの実現を目指している。量子ドットのサイズは自然の原子に比べて格段に大きいので、単一光子の電界でも大きな相互作用を得ることができ、電子と光子がエンタングルした状態の形成も期待できる。単一スピンと光子の相互作用は磁気的なものであり、電気的な相互作用に比べてずいぶん小さいため、スピン軌道相互作用(SOI)を介してスピンと光子間の大きな相互作用を得ることも検討している。そのため、本研究ではSOIの大きなInSbやGe/Siからなるナノワイアを用いて量子ドットを形成する。図は超伝導体で作製したコプレーナ型マイクロ波共振器の中に量子ドットを置いた試料である。極低温(~100mK)において、共振器中のマイクロ波の強度は光子数にして1光子以下となる条件で、量子ドットの電荷(スピン)状態を透過するマイクロ波の共振特性の変化として測定する。現在のところ量子ドット中の単一電荷と光子の相互作用は確認されているが、量子ドットのデコヒーレンスが電子・光子間の相互作用よりも大きいためコヒーレントな相互作用は得られていない。

電子顕微鏡写真

超伝導体で作製したコプレーナ型マイクロ波共振器とその中に埋め込んだGe/Siナノワイヤー量子ドットの電子顕微鏡写真

メンバー一覧

石橋 幸治 Koji Ishibashi

チームリーダー kishiba[at]riken.jp

大野 圭司 Keiji Ono

専任研究員

Russell Stewart Deacon

専任研究員

Patrick Ferdinand Zellekens

基礎科学特別研究員

主要論文

  1. P. Zellekens, R. Deacon, P. Perla, D. Gruetzmacher, M. I. Lepsa, T. Schaepers, and K. Ishibashi

    Microwave spectroscopy of Andreev states in InAs nanowire-based hybrid junctions using a flip-chip layout

    Commun. Phys. 5, 267 (2022)
  2. A. Hida, and K. Ishibashi

    Exciton Controlled-NOT Gate Using Coupled Quantum Dots in Carbon Nanotube

    ACS Photonics 9, 3398–3403 (2022)
  3. M. Ohtomo, R. S. Deacon, M. Hosoda, N. Fushimi, H. Hosoi, M. D. Randle, M. Ohfuchi, K. Kawaguchi, K. Ishibashi, and S. Sato

    Josephson junctions of Weyl semimetal Wte2 induced by spontaneous nucleation of PdTe superconductor

    Appl. Phys. Express 15, 75003 (2022)
  4. R. Wang, R. S. Deacon, J. Sun, J. Yao, C. M. Lieber, and K. Ishibashi

    Gate Tunable Hole Charge Qubit Formed in a Ge/Si Nanowire Double Quantum Dot Coupled to Microwave Photons

    Nano Lett. 19, 1052 (2019)
  5. R. S. Deacon, J. Wiedenmann, E. Bocquillon, F. Dominguez, T. M. Klapwijk, P. Leubner, C. Bruene, E. M. Hankiewicz, S. Tarucha, K. Ishibashi, H. Buhmann, and L. W. Molenkamp

    Josephson Radiation from Gapless Andreev Bound States in HgTe-Based Topological Junctions

    Phys. Rev. X 7, 021011 (2017)

研究紹介記事