量子システム理論研究チーム

主宰者

主宰者名 Daniel Loss
学位 Ph.D.
役職 チームリーダー
略歴
1985 スイス チューリッヒ大学理論物理学 博士学位取得
1985 スイス チューリッヒ大学 博士研究員
1989 米国 イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 フェロー
1991 米国 IBMトーマス・J・ワトソン研究所 研究員
1993 カナダ サイモンフレーザー大学 助教授
1995 同 准教授
1996 スイス バーゼル大学物理学科 教授(現職)
2012 理化学研究所 創発量子システム研究チーム チームリーダー
2013 同 創発物性科学研究センター 量子情報エレクトロニクス部門 量子システム理論研究チーム チームリーダー(現職)
2021 同 量子コンピュータ研究センター 半導体量子情報デバイス理論研究チーム チームリーダー(現職)

研究室概要

当チームでは半導体、磁性ナノ構造におけるスピンとトポロジカル現象を中心として量子物性理論の研究を行っている。我々は固体中の新規なスピン/トポロジカル相や新たな機構の探索をテーマとしている。具体的には、螺旋状のスピン構造、トポロジカル絶縁体、トポロジカル超伝導体などに注目している。これらはマヨラナフェルミオンやパラフェルミオンのようなトポロジカル量子状態を実現する可能性を秘めている。また、一次元系と準一次元系の朝永ーラッティンジャー液体、半導体中の核スピンや低次元系の多体効果、(分数)量子ホール効果、強相関電子系、スピン軌道相互作用、量子輸送現象にも注目する。

研究分野

物理学

キーワード

強相関電子系
ナノデバイス
スピン-軌道相互作用
トポロジカル量子物質
マヨラナフェルミオンとパラフェルミオン

研究紹介

半導体中のヘリカル液体

一次元のヘリカル液体は特定の凝縮系の境界に現れる。代表的な二つの例は二次元トポロジカル絶縁体として知られる量子スピンホール絶縁体のエッジと三次元トポロジカル絶縁体の表面である。このような状態の存在は、その非自明なバルクトポロジーを示す証左となる。我々は、ヘリカル液体の実現、トポロジカルな保護と安定性、あるいは実験的な特性評価の可能性など、様々な側面について研究している。特に、近接場誘起のトポロジカル超伝導に注目し、その結果得られるマヨラナ束縛状態を用いたトポロジカル量子計算への興味深い応用を可能にする。

ヘリシティ。(左図) 素粒子物理学では、粒子のヘリシティは、スピンと運動量の相対的な向きによって定義される。 (右図) パラボリックな分散を持つスピン1/2のフェルミオンが存在する凝縮系では、フェルミ準位近傍の縮退状態をスピンまたはヘリシティのどちらかでラベル付けすることができる。スピンと異なり、ヘリティーが反対の状態は、時間反転不変系で区別することができる。 Chen-Hsuan Hsu, Peter Stano, Jelena Klinovaja, and Daniel Loss, “Helical Liquids in Semiconductors”, Semicond. Sci. Technol. 36, 123003 (2021).© IOP Publishing

 

高次のトポロジカル絶縁体におけるマヨラナ・クラマース対

高次のトポロジカル絶縁体は、近年のトポロジカル物性の研究で実現した系である。これらはバルクや表面では絶縁であるが、二つの面の境界、つまりエッジ(辺)では進行波の状態をもつ。我々はこの高次のトポロジカル絶縁体と超伝導近接効果による、調整不要なマヨラナ・クラマース対の実現を可能にする系を設計した。

我々の手法は、ビスマス細線に超伝導体をハーフカバーで取り付けるという、既存の実験的技術で実現可能なものである。つまり、高次のトポロジカル絶縁体上の、ヘリシティが同一の2辺にまたがるようにs波超伝導体を接合すると、適度な電子間相互作用により1辺でよりも2辺間でのペアリングを好むことから、マヨラナ・クラマース対が形成されることが分かった。結果として、この手法では磁場や局所的なゲートを必要としない。これはトポロジカルな状態の探索において強く望まれてきた性質である。

図

左図: 超伝導体(黄色)と細線(緑)による高次トポロジカル絶縁体の概念図
右図: 左図のモデルの系の相図
Chen-Hsuan Hsu, Peter Stano, Jelena Klinovaja, and Daniel Loss, “Majorana Kramers Pairs in Higher-Order Topological Insulators,” Phys. Rev. Lett. 121, 196801 (2018) © APS

 

<!–

駆動されたRashba型のナノワイヤー結合系におけるトポロジカルフロッケ相

これまでのトポロジカル物質の静的特性に関する精力的な研究を背景に、最近、非平衡系に内在するトポロジカル特性を解明しようという試みがなされている。粒子間相互作用のある二次元電子系はボゾン化により、一次元Luttinger液体とみなせるRashbaナノワイヤーの弱結合系(図:参照)から成る異方性の強い二次元系とみなすことができ、その解析はより容易となる。これにより、外場により非平衡状態に駆動された二次元トポロジカル絶縁体およびWeyl半金属系のFloquet状態を導入することができる。特筆すべきは、同様の手順により、分数電荷を有する領域を調べることができ、そうした分数トポロジカル絶縁体および分数Weyl半金属系のFloquet状態を構成することが可能となる。

上図:Floquetトポロジカル絶縁体を実現する、時間依存外場に駆動された量子ナノワイヤーをならべたもの

下図:Floquet結合tFおよびトンネル結合t2を関数とした上図モデルの相図

J. Klinovaja, P. Stano, D. Loss, “Topological Floquet Phases in Driven Coupled Rashba Nanowires”, Phys. Rev. Lett. 116, 176401 (2016) © APS

–>

 

メンバー一覧

Daniel Loss

チームリーダー loss.daniel[at]riken.jp

Peter Stano

上級研究員 peter.stano[at]riken.jp

主要論文

  1. O. Malkoc, P. Stano, and D. Loss

    Charge-Noise-Induced Dephasing in Silicon Hole-Spin Qubits

    Phys. Rev. Lett. 129, 247701 (2022)
  2. C.-H. Hsu, P. Stano, J. Klinovaja, and D. Loss

    Helical liquids in semiconductors

    Semicond. Sci. Technol. 36, 123003 (2021)
  3. C.-H. Hsu, F. Ronetti, P. Stano, J. Klinovaja, and D. Loss

    Universal conductance dips and fractional excitations in a two-subband quantum wire

    Phys. Rev. Research 2, 043208 (2020)
  4. P. P. Aseev, P. Marra, P. Stano, J. Klinovaja, and D. Loss

    Degeneracy lifting of Majorana bound states due to electron-phonon interactions

    Phys. Rev. B 99, 205435 (2019)
  5. C.-H. Hsu, P. Stano, J. Klinovaja, and D. Loss

    Majorana Kramers Pairs in Higher-Order Topological Insulators

    Phys. Rev. Lett. 121, 196801 (2018)

研究紹介記事