強相関物質研究グループ

主宰者

主宰者名 田口 康二郎 Yasujiro Taguchi
学位 工学博士
役職 グループディレクター
略歴
1993 ソニー株式会社 総合研究所 研究員
1997 東京大学大学院工学系研究科 助手
2002 同 博士学位取得
2002 東北大学金属材料研究所 助教授
2007 理化学研究所 交差相関物質研究チーム チームリーダー
2010 同 強相関物質研究チーム チームリーダー
2013 同 創発物性科学研究センター 強相関物理部門 強相関物質研究チーム チームリーダー
2018 同 創発物性科学研究センター 強相関物理領域 強相関物質研究グループ グループディレクター(現職)
2018 同 創発物性科学研究センター センター長室長
2024 同 創発物性科学研究センター 副センター長(現職)

研究室概要

当グループでは、遷移金属酸化物をはじめとする強相関電子系のバルク試料において、巨大な交差相関応答の発現やその機構の解明、および新しい物質機能の創製を目的としている。そのために、超高圧合成をはじめとする種々の合成法を用いて試料を合成し、新物質・新機能探索を行っている。具体的には、(1)新規スキルミオン物質の開発、(2)マルチフェロイクス物質における電気磁気交差応答の巨大化・高温化、(3)新規磁性体の開拓、(4)新規熱電材料の開発などである。これらの強相関材料における巨大応答を利用して、持続可能社会の構築に資する新機能性材料の創製を目指す。

研究分野

物理学、工学、 材料科学

キーワード

強相関電子系
スキルミオン
マルチフェロイクス
熱電効果

研究紹介

室温でアンチスキルミオンを示す新物質の発見

スキルミオンは、整数のトポロジカル数で定義されるナノメートルサイズの磁気渦であり、安定な粒子として振舞うことから、高性能の磁気メモリーとしての応用が期待されている。一方、アンチスキルミオンは、スキルミオンと逆符号のトポロジカル数を持つ磁気渦であり、新しいトポロジカル磁気構造として近年注目されている。しかしながら、これまでに報告されているアンチスキルミオン物質はD2d対称性を持つホイスラー合金のみであり、アンチスキルミオンのトポロジカル物性の解明と応用の実現に向けて、新物質開拓が求められていた。当グループでは、S4対称性を持つシュライバーサイト (Fe, Ni)3PにPdを加えたFe1.9Ni0.9Pd0.2Pを合成し、室温を含む広い温度範囲でアンチスキルミオンが発現することを発見した。また、磁場や試料の厚さを変えることでアンチスキルミオンとスキルミオンが相互変換できることや、厚い試料の表面付近でS4対称性を反映したノコギリ型の新奇な磁気ドメイン構造が発現することを見出した。

(a)スキルミオン、(b)アンチスキルミオン、および(c)アンチスキルミオン物質の結晶構造の対称性を模式的に示した。

 

室温スキルミオンと準安定状態におけるスキルミオン格子の構造変形

スキルミオンはナノメートルサイズの磁気渦であり、トポロジカルな性質により安定な粒子として振舞う。このため、高性能の磁気メモリーとしての応用が期待されている。しかしながら、これまでに報告されているカイラル・スキルミオンの生成は280 K以下の温度に限られており、応用の観点からは、より高温でスキルミオンを実現することが望まれていた。当チームでは、立方晶でカイラルなb-Mn型構造のCo-Zn-Mn合金において、室温および室温以上の温度でスキルミオン結晶が生成することを発見した。さらに、この熱平衡スキルミオン相から磁場を印加したまま冷却することで、幅広い温度および磁場領域において、スキルミオン格子が準安定状態として存在し続けることを見出した。また、磁場中冷却の過程で、スキルミオン格子の形状が、通常の三角格子から、正方格子へと変形することを見出した。

図

スキルミオン格子の構造変形

メンバー一覧

田口 康二郎 Yasujiro Taguchi

グループディレクター y-taguchi[at]riken.jp
Markus Wilhelm Bernhard Kriener 上級研究員 markus.kriener[at]riken.jp
中村 大輔 Daisuke Nakamura 上級研究員 daisuke.nakamura.rg[at]riken.jp
吉川 明子 Akiko Kikkawa 上級技師 kikkawa[at]riken.jp

Zhehong Liu

特別研究員

Gurvan Henri Jean Bosser

テクニカルスタッフI

主要論文

  1. D. Nakamura, K. Karube, K. Matsuura, F. Kagawa, X. Yu, Y. Tokura, and Y. Taguchi

    Transport signatures of magnetic texture evolution in a microfabricated thin plate of antiskyrmion-hosting (Fe, Ni, Pd)3P

    Phys. Rev. B 108, 104403 (2023)
  2. K. Karube, L. Peng, J. Masell, M. Hemmida, H.-A. K. von Nidda, I. Kezsmarki, X. Yu, Y. Tokura, and Y. Taguchi

    Doping Control of Magnetic Anisotropy for Stable Antiskyrmion Formation in Schreibersite (FeNi)3P with S4 symmetry

    Adv. Mater. 34, 2108770 (2022)
  3. K. Karube, L. C. Peng, J. Masell, X. Z. Yu, F. Kagawa, Y. Tokura, and Y. Taguchi

    Room-temperature antiskyrmions and sawtooth surface textures in a non-centrosymmetric magnet with S4 symmetry

    Nat. Mater. 20, 335 (2021)
  4. M. Kriener, M. Sakano, M. Kamitani, M. S. Bahramy, R. Yukawa, K. Horiba, H. Kumigashira, K. Ishizaka, Y. Tokura, and Y. Taguchi

    Evolution of Electronic States and Emergence of Superconductivity in the Polar Semiconductor GeTe by Doping Valence-Skipping Indium

    Phys. Rev. Lett. 124, 047002 (2020)
  5. V. Kocsis, T. Nakajima, M. Matsuda, A. Kikkawa, Y. Kaneko, J. Takashima, K. Kakurai, T. Arima, F. Kagawa, Y. Tokunaga, Y. Tokura, and Y. Taguchi

    Magnetization-polarization cross-control near room temperature in hexaferrite single Crystals

    Nat. Commun. 10, 1247 (2019)

研究紹介記事