強相関量子伝導研究チーム

主宰者

主宰者名 十倉 好紀 Yoshinori Tokura
学位 工学博士
役職 チームリーダー
略歴
1981 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 博士課程修了
1986 東京大学理学部物理学科 助教授
1994 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 教授
1995 同 工学系研究科物理工学専攻 教授 
2001 産業技術総合研究所 強相関電子技術研究センター センター長
2007 理化学研究所 交差相関物性科学研究グループ グループディレクター
2008 産業技術総合研究所 フェロー (現職)
2010 理化学研究所 物質機能創成研究領域 領域長
2010 同 強相関量子科学研究グループ グループディレクター
2013 同 創発物性科学研究センター センター長
2013 同 強相関物理部門 強相関物性研究グループ グループディレクター (現職)
2014 同 強相関物理部門 強相関量子伝導研究チーム チームリーダー (現職)
2017 東京大学卓越教授 (現職)
2019 東京大学特別栄誉教授
2024 理化学研究所 理事長特別補佐(現職)

研究室概要

当チームでは、電子間相互作用の強い系およびスピン-軌道相互作用の強い系に着目し、バルクおよび薄膜ヘテロ界面等で生じる様々な量子輸送現象に関して研究を行っている。具体的には、トポロジカル絶縁体薄膜表面・界面におけるディラック電子系のランダウ準位形成や量子(異常)ホール効果、バルクで反転対称性の破れたラシュバ系において生じる量子振動現象などを低温・強磁場中で観測して、その量子状態を明らかにすることを行っている。また、銅酸化物高温超伝導体や遷移金属酸化物薄膜などを作製し、高圧力下や高磁場下での輸送特性を測定して、超伝導転移温度の向上や新しい磁気輸送特性の創出を目指している。

研究分野

物理学、工学、材料科学

キーワード

強相関電子系
高温超伝導体
スピン-軌道相互作用
トポロジカル絶縁体
界面電子構造

研究紹介

薄膜超構造を用いた二次元ディラック電子の表面量子伝導

トポロジカル絶縁体とは、物質内部は三次元的なバンドギャップを有する絶縁体であるが、表面にディラック状態と呼ばれる二次元的なギャップの開かない金属的バンドを有する物質である。ディラック電子は有効質量を持たず、電子スピンは結晶運動量の向きに垂直に偏極していることから、電荷・スピン自由度の両者に関する量子伝導の舞台となり、低消費電力デバイスなどへの応用が期待されている。 特に、表面ディラック電子が磁性体と相互作用した結果生じる量子異常ホール効果は、非散逸な一次元伝導を外部から磁場をかけることなく実現するため、近年盛んに研究されている。当チームは分子線エピタキシー(MBE)法を用いることで、トポロジカル絶縁体の一つである(Bi1-xSbx)2Te3を強磁性絶縁体(Zn,Cr)Teによって上下から挟み込んだ薄膜超構造を作製した。希釈冷凍機を用いて極低温に冷却することで、量子異常ホール効果を明瞭に観測することに成功した。今後は、薄膜超構造を駆使することでトポロジカル物質に機能性を付与することを目的とし、特に、量子コンピューターへの応用が期待されているマヨラナ粒子の観測・制御を超伝導体との超構造界面で行う。

トポロジカル絶縁体表面における量子ホール効果のイメージ

メンバー一覧

十倉 好紀 Yoshinori Tokura

チームリーダー tokura[at]riken.jp

Ilya Belopolski

研究員 ilya.belopolski[at]riken.jp

佐藤 雄貴 Yuki Sato

特別研究員

Max Birch

基礎科学特別研究員

Lixuan Tai

特別研究員

大貫 惇睦 Yoshichika Onuki

客員主管研究員

山本 文子 Ayako Yamamoto

客員研究員

茂木 将孝 Masataka Mogi

客員研究員

主要論文

  1. M. Kawamura, M. Mogi, R. Yoshimi, T. Morimoto, K. S. Takahashi, A. Tsukazaki, N. Nagaosa, M. Kawasaki, and Y. Tokura

    Laughlin charge pumping in a quantum anomalous Hall insulator

    Nat. Phys. 19, 333–337 (2023)
  2. M. Mogi, Y. Okamura, M. Kawamura, R. Yoshimi, K. Yasuda, A. Tsukazaki, K. S. Takahashi, T. Morimoto, N. Nagaosa, M. Kawasaki, Y. Takahashi, and Y. Tokura

    Experimental signature of the parity anomaly in a semi-magnetic topological insulator

    Nat. Phys. 18, 390–394 (2022)
  3. K. Yasuda, T. Morimoto, R. Yoshimi, M. Mogi, A. Tsukazaki, M. Kawamura, K. S. Takahashi, M. Kawasaki, N. Nagaosa , and Y. Tokura

    Large non-reciprocal charge transport mediated by quantum anomalous Hall edge states

    Nat. Nanotechnol. 15, 831 (2020)
  4. K. Yasuda, H. Yasuda, T. Liang, R. Yoshimi, A. Tsukazaki, K. S. Takahashi, N. Nagaosa, M. Kawasaki, and Y. Tokura

    Nonreciprocal charge transport at topological insulator/superconductor interface

    Nat. Commun. 10, 2734 (2019)
  5. R. Yoshimi, K. Yasuda, A. Tsukazaki, K. S. Takahashi, M. Kawasaki, and Y. Tokura

    Current-driven magnetization switching in ferromagnetic bulk Rashba semiconductor (Ge,Mn)Te

    Sci. Adv. 4, aat9989 (2018)

研究紹介記事